<炭化ケイ素の知識>
2007/10/19 日記<炭化ケイ素>
炭化ケイ素
炭化ケイ素(Silicon Carbide、化学式SiC)は、炭素(C)とケイ素(Si)の1:1 の化合物で、天然では、隕石中にわずかに存在が確認される。鉱物学上「moissanite」(モアサナイト)と呼ばれ、また、19世紀末に工業化した会社の商品名から「カーボランダム」と呼ばれることもある。ダイヤモンドの弟分、あるいはダイヤモンドとシリコンの「あいのこ」的な性質を持ち、硬度、耐熱性、化学的安定性に優れることから、研磨材、耐火物、発熱体などに使われ、また半導体でもあることから、電子素子の素材にもなる。結晶の光沢を持つ、黒色あるいは緑色の粉粒体として、市場に出る。
結晶構造
SiとCは、いずれも周期表上で同じIV族に属することから、基本的には共有結合性であるが、電気陰性度の違いによりイオン性を持つため、1対1の定比化合物として安定に存在する。図1で結晶構造を説明する。図の左半の正三角形に筋目をつけて折り上げ、接する稜線を貼りつければ、正三角形四枚を表面とする正四面体ができる。その四つの頂点にSi原子あるいはC原子、そして重心の位置にC原子あるいはSi原子を置いた正四面体から、炭化ケイ素の結晶を組みあげることができる。ちなみに、ダイヤモンドでは頂点と重心位置とがすべてC、シリコンではすべてSi、高圧相窒化硼素ではBとNとである。ダイヤモンドの弟分、あるいはダイヤモンドとシリコンの「あいのこ」的な性質はここからくる。その正四面体を密に平面上に並べると、図の右半の網目模様となり、正三角形の中央で120°間隔の三本足をつけた黒丸が正四面体の頂点の原子たち、それ以外の黒丸が正四面体の底面の原子たちである。正四面体の詰まった層が一つできた。その第1層の上に乗る第2層の正四面体は、第1層の頂点たち、すなわち三本足つき黒丸を足場に並べることになる。その場合、図の右端に斜線をつけた(<)と(>)の二通りの並べかたがあり、この(<)か(>)かが炭化ケイ素に多くの結晶多形(ポリタイプ)を作ることになる。第1層は(<)の向きに描いてある。斜線つき正三角形の(<)か(>)かのいずれかで第2層を並べてゆく。第2層の頂点は、斜線つき正三角形の中央、すなわち、図で"<"の記号、あるいは">"の記号を囲んだ白丸の所になり、そこが第3層を積む足場になる。以下同様……。第1層の底面 → 第1層の頂点(兼第2層の底面) → 第2層の頂点(兼第3層の底面)、と原子をたどると、(<)で積む場合は一様に右上がりに、(>)で積む場合は右上がりだったのが左上がりに折れる。そして、図の">"の記号を囲んだ白丸の真下には第1層の底面の原子がある。すなわち、(<)の向きの第1層に(>)の向きの第2層を重ね、その上にまた(<)の向きの第3層というふうに(<)(>)(<)(>)(<)(>)……と積むと、原子はジグザグを描いて上がり、2層が一周期になる。この結晶は結晶構造|六方晶系の(hexagonal)対称性を持つから、2Hと記号し、また、(<)が1つ、(>)が1つだから、ジグザグを11と書く。つぎに、(<)(<)(<)(<)……と積むと3層が一周期になり、結晶構造|立方晶系の(cubic)対称性を持つから、3Cと記号する。何十種類も知られている炭化ケイ素の多形の、繰り返し周期の小さい方の幾つかを表1に書く。
| 記号 | 晶 系 | ジグザグ | 同 類 |
|---|---|---|---|
| 2H | 六方晶 | 11 | ウルツ鉱型窒化ホウ素 |
| 3C | 立方晶 | ダイアモンド、立方晶窒化ホウ素 | |
| 4H | 六方晶 | 22 | |
| 6H | 六方晶 | 33 | |
| 8H | 六方晶 | 44 | |
| 10H | 六方晶 | 55 | |
| 15R | 菱面体晶 | (32)3 |
工業的製造法
ここでいう「工業的」とは、一度に10トンの単位で作られ、製品が最高純度ではないというような意味の、19世紀末以来の方法である。図2の左は、炉の長さ方向の断面で、10mよりは長い。左右の黒いのは黒鉛電極で、それらを結ぶ黒まだらは黒鉛の粉、その上下は、ケイ石、コークス他の原料である。電極に電圧をかけると、黒鉛粉が発熱して周囲の原料を加熱する。1500°Cを越えると微細な3Cが生成しはじめ、昇温とともに3Cは消え4H、6H、15Rなどが発達するが、この環境では、2200°C以上でそれらは分解して黒鉛の粉を残す。反応は SiO2+3C=SiC+2CO でまとめられる。電圧を切ったあとの横方向の断面が図2の右である。同心円の中心部の黒鉛粉はSiCが分解した分だけ太り、その外側に(斜線を付けた)SiCの塊がチクワ状に生成する。その外側は温度が1500°Cくらいにしか上がらなかった3Cの薄い層、その又外側は反応しなかった原料で、未反応物は次の操炉の原料に混ぜる。
SiCの塊は、中心から外側へ放射状に発達した結晶粒の集まりで、通気性に富む。炉に原料や黒鉛粉を積む → 通電する → 停めて冷す → SiC塊を取出すの各工程の長さは、数日ずつである。この炭化ケイ素の製造には多量の電力が必要で、安価な電力が得られる立地で行われる。製品の塊から不純物を除き、粉砕し、さらに不純物を除き、粒度ごとに篩い分け、製品にする。
性質
表2に、周期表IV族の三兄弟、C、SiC、Siの性質を並べる。炭素原子よりシリコン原子の方が大きいから、C<SiC<Siと原子間距離は広がり、熱伝導率は小さくなり、硬さは下がる。表の熱伝導率に幅があるのは、純度による。硬さ|ヌープ硬度は、結晶面によって違う。
| 特性 | 単位 | ダイヤモンド | 炭化ケイ素 | シリコン |
|---|---|---|---|---|
| 原子間距離 | nm | 0.154 | 0.188 | 0.235 |
| 密度 | g/cm3 | 3.513 | 3.217 | 2.330 |
| 熱伝導率 | W/m/K | 600〜2000 | 100〜350 | 168 |
| 硬さ|ヌープ硬度 | kgf/mm2 | 7000〜8000 | 2500〜3200 |
炭化ケイ素の特長はまずその硬さで、滑石を1、ダイヤモンドを15とするモース硬度|修正モース硬度の序列では、13である。純粋な炭化ケイ素は無色透明と言われ、工業製品は緑色から黒色を呈するが、製造の環境を清浄にするほど色が薄くなる。緑ないし黒の着色は、窒素、アルミニウムなどIII族V族元素の原子が結晶格子に入り込んで作る不純物準位による。したがって結晶の電気抵抗は色が薄いほど桁違いに高く、発熱体の原料に使用されるのは緑色品である。炭化ケイ素は800℃以上の大気中で酸化するが、表面に生成するSiO2が酸化を遅める保護被膜になる。液体にはならない。3070℃で昇華するといわれる。フッ化水素、硫酸、硝酸の混合液にはわずかに溶ける。ある種の溶融塩および融鉄には溶ける。
用途
研磨剤|研磨材、耐火煉瓦の原料、鋳鉄への加炭加ケイ素剤、などに大量に使われる。鋳鉄用は低純度品である。電気素子の素材としては、発熱体、アレスタ、バリスタなどに長く使われてきたが、1980年代以降の結晶成長技術の発展にともない、高温、高線量下で働くバリスタ、青色発光ダイオード、高速ショットキーバリアダイオード|Schottkyダイオード、MOS電界効果トランジスタ、などに使われるようになった。熱伝導率が高いので、他の半導体の基板としても重宝がられている。ファインセラミックス、http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/kagaku03/frame.htm|
エンジニアリングセラミックスとしての用途も、開けている。金型プレス成形、静水圧成形、射出成形、スリップキャスト成形、押出成形、などの成型法、反応焼結、常圧焼結、加圧焼結、再焼結などの焼結法が行われている。また、近年、ディーゼル車の排出する煤塵の集塵用フィルター(DPF)材料としての用途が急拡大されている。
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◆炭化ケイ素についてピックアップ 研磨剤|研磨材、耐火煉瓦の原料、鋳鉄への加炭加ケイ素剤、などに大量に使われる。鋳鉄用は低純度品である。電気素子の素材としては、発熱体、アレスタ、バリスタなどに長く使われてきたが、1980年代以降の結晶成長技術の発展にともない、高温、高線量下で働くバリスタ、青色発光ダイオード、高速ショットキーバリアダイオード|Schottkyダイオード、MOS電界効果トランジ... |




