<太陽電池の知識>
2007/10/21 日記<太陽電池>
太陽電池
太陽電池(たいようでんち、Solar cell)は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器である。主流のシリコン太陽電池の他、様々な化合物半導体などを素材にしたものが実用化されている。色素増感型(有機太陽電池)と呼ばれる太陽電池も研究されている。本項では太陽電池(セル)そのものについて述べる。電源としての特徴などについては太陽光発電の項を参照されたい。
歴史
太陽電池の先駆けは米国のベル研究所にて開発された単結晶シリコン型太陽電池で、1954年にM.B.Princeによって論文が発表されている。当時は Bell Solar Battery と呼ばれ、太陽光のエネルギーを電力に変換する効率は6%であった。当初は宇宙用が主な用途で、一次電池を用いた世界最初の人工衛星スプートニク1号が21日の寿命しかなかったのに対し、太陽電池を用いた最初の人工衛星ヴァンガード1号[http://www.nrl.navy.mil/content.php?P=VANGUARD]は6年以上動作し、その有用性を示している。その後無人灯台など徐々に用途を拡大し、日本でも1960年代に量産が開始された。しかし電源としての本格的な開発が始まったのは1974年のオイルショック|石油ショック以降である。生産量は1980年代初めは数MW分に過ぎなかったが、2004年現在では世界全体で約1.2GWにまで成長している。(参照:http://www.apec-vc.or.jp/apec_j/solar_j/outline/outlne07.htm
1977年からの生産量の推移 http://www.sharp.co.jp/sunvista/about/result.html
近年の生産量とシェア)。
変換効率については、現在では変換効率が40%近い多接合型集光セルも開発されるなど、高性能化が進んでいる。一方で一般市場向けの製品では省資源化と低コスト化が進んでおり、市場が急拡大している。なお2004年の時点では、日本が生産量で約半分のシェアを持っており、販売市場ではドイツが39%でトップである。参照:http://www.jpea.gr.jp/4/4-2-4.htm
導入量の推移。
用途
* 電池交換や給電線を不要とし、利便性向上やコスト削減を図る:電卓、腕時計、道路標識、庭園灯、街路灯、駐車券発行機などなど。太陽光発電の項も参照のこと。
原理
pn接合型の場合
現在一般的な太陽電池は、p型とn型の半導体を接合した構造を持つ。即ち、大きなpn接合型ダイオード(フォトダイオード)である。下記の太陽電池#シリコン系|シリコン系、太陽電池#化合物系|化合物系の太陽電池がこれに該当する。
発光ダイオードと逆の過程を通じて電子に光のエネルギーを吸収させ(光励起)、半導体の性質を利用して、エネルギーを持った電子を直接的に電力として取り出す。詳しくは光起電力効果の項を参照のこと。
色素増感太陽電池の場合
色素増感太陽電池では、pn接合型とは様相が異なる。入射光によって、二酸化チタンに吸着された色素中の電子が励起される。この励起された電子を二酸化チタンを介して電極(陰極)へと導き、直流として取り出す。送り出された電子は外部回路を経由して対向電極(陽極)に戻り、電極間に挟まれた電解質中のイオンを介して再び色素吸着部へと戻る。(http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/solar_cell/01_mokuji.htm
特許庁によるまとめ)
回路部品としての動作
太陽電池の等価回路は左図のようになる。最も単純なモデルでは抵抗成分を無視して、電流源 と(理想ダイオードではない)ダイオードのみで表される。抵抗成分を無視した太陽電池の暗電流は、 を逆方向飽和電流、qを電気素量、Vを電圧、nを理想ダイオード因子、kをボルツマン定数、Tを温度として:
のように表される。ここで n=1 としたものがpn接合の理想I-V特性である。実際の素子を近似するには、直列抵抗(series resistance) と並列抵抗(shunt resistance) 成分も考慮する。直列抵抗成分は素子各部を電流が流れる時の抵抗成分であり、これが低いほど性能が良くなる。並列抵抗はpn接合周辺における漏れ(リーク)電流などによって生じ、これが高いほど性能が良い。抵抗成分を含めた太陽電池の光照射時の電流-電圧特性は次のように表される。
:
太陽電池の電圧-電流特性は右図のようになる。光照射時に於いて、端子を開放した時の出力電圧を開放電圧(open circuit voltage )、短絡した時の電流を短絡電流(short-circuit current, )と呼ぶ。また を有効受光面積 で割ったものを短絡電流密度( )と呼ぶ。最大の出力電力を与える動作点Pmaxを最大出力点(maximum power point, 最適動作点、最適負荷点)と呼ぶ。また を曲線因子(fill factor)と呼ぶ。
照射光による入力エネルギーを 100mW/cm2 (または1000W/m2)で規格化した測定では、公称変換効率は
:
で与えられる。太陽電池から効率よく電力を得るには、太陽電池を最大出力点付近で動作させる必要がある。このため大電力用のシステムでは通常、最大電力点追従装置(Maximum Power Point Tracker, MPPT)を用いて、日射量や負荷にかかわらず、太陽電池側からみた負荷を常に最適に保つように運転が行われる。
種類
光吸収層の材料、および素子の形態などにより、多くの種類に分類される。
それぞれ異なる特徴を持ち、用途に応じて使い分けられている。
シリコン系
シリコンを用いる太陽電池は、材料の性質の観点からは、大きく結晶シリコンとアモルファスシリコンに分類することができる。またその形態から、薄膜型や多接合型などを分別することができる。その形式や性能は非常に多様であり、近年は複数の型を複合させたものも実用化されている。このため、ここに挙げた分類法も絶対のものではないことを付記しておく。
シリコン膜の構造による分類
''結晶シリコン''の禁制帯幅は 1.12 eV であり、太陽電池に用いた場合、近紫外域から 1.2 μm 程度までの光を吸収して発電できる。間接遷移型の半導体であるため光吸収係数が低く、実用的な吸収量を得るには最低200μm程度のシリコン層が必要とされてきた。しかし表面テクスチャなどを用いた光閉じ込め技術が発達してきており、近年は結晶シリコンであってもシリコン層が数 μm〜50 μmなどと非常に薄く、薄膜太陽電池に分類できるものも開発されている。c-Siなどと略記される。; 単結晶シリコン型:高純度シリコン単結晶ウエハを利用するもので、最も古くから使われている。変換効率は高いが高純度シリコンの利用量が多く、生産に必要なエネルギーやコストが高くなる。そのため近年は下記の多結晶シリコンや薄膜シリコン太陽電池に移行が進んでいる。
EPIA, Solar Generation IV - 2007, P.43)。また、ガラス上に非常に薄い多結晶シリコン太陽電池を形成する、CSG(またはSOG)技術の普及も有望視されている(P.17)。
開発例1・http://www.sharp.co.jp/corporate/rd/28/pdf/93_07.pdf
開発例2''アモルファスシリコン''は、タウツギャップと呼ばれる通常 1.75〜1.8 eV 程度のエネルギーギャップと、それより小さな裾準位を介したエネルギーギャップを持つ。タウツギャップの大きさは通常 1.75〜1.8 eV 程度である。太陽電池にそのまま用いた場合は主に 700 nm 以下の短波長の光が利用され、見た目には赤っぽく見える。結晶構造の乱れにより、光学遷移にフォノンの介在を必要とせず、光吸収係数が高い。このため 0.5 μm 程度の厚さでも実用になる。a-Si などと略記される。; アモルファスシリコン型:シラン (化合物)|シランガスから化学気相成長 (CVD) させてできるアモルファスシリコンを利用した太陽電池で、形態的には薄膜シリコン太陽電池にも分類できる。結晶シリコンに比べてエネルギーギャップが大きいため、高温時も出力が落ちにくい特性を持つ。使用するシリコン原料が少なく、エネルギーやコスト的にも有利である。極端な低照度下での効率が高いことや、蛍光灯の短波長光に感度があることから、主に電卓など室内用途に使われてきた。太陽光で劣化しやすいのが欠点だったが、技術の進歩により長寿命化され(太陽電池#アモルファスシリコンの光劣化|アモルファスシリコンの光劣化参照)、近年は屋外用にも市販されている。エネルギー変換効率が10%以下と低い(設置面積が大きくなる)のも欠点だったが、多結晶シリコン等と積層した多接合型とすることで高性能化されている。またタウツギャップの大きさはドーピングによって1〜2eV程度の範囲で可変であり、これを利用してアモルファス層のみで構成された太陽電池#多接合型太陽電池|多接合型太陽電池も実用化されている。近年は下記の薄膜太陽電池の一種として論じられることも多い。
形態による分類
解説1・http://www.evergreensolar.com/egsolar1/eg_technology.htm
解説2)を用いた型や、化学気相成長|CVD法などを用いる微結晶型などが代表的である。厚みは生産方法の選択によって100nm(0.1μm)単位から数百µm以上まで連続的にカバーでき、目的に応じて使い分けられる。インゴットから切断したウエハを用いて製造する場合は通常数百 μm 単位になるのに対し、融液から直接薄膜の形にするリボン法などでは100 μm 以下、化学気相成長|CVD法などを用いた場合(アモルファス型や微結晶型など)では0.5〜数μmまで薄くなる。薄膜のままでは充分に入射光を吸収できないため、表面テクスチャや中間層を用いて光学的特性を制御し、入射光の利用率を高める工夫が施される(ライトトラッピング)。効率の低下分よりも生産時の使用エネルギーやコストが多く削減できるため、環境負荷の観点から優秀なものが多い。尚、変換効率10%を達成したシャープが、1000MW/年の大量生産する新工場を、2009年度中に稼動させる計画を進めている。[http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200708210007a.nwc]; ハイブリッド型(HIT型):結晶シリコンとアモルファスシリコンを積層した太陽電池である。通常の結晶シリコンに比して変換効率が高く、温度特性も良いなどの特長を有する[http://www.nef.or.jp/award/kako/h09/98syo3.htm][http://www.sanyo.co.jp/clean/solar/hit_j/module.html]。シリコンの使用量が減らせる他、両面受光型にも出来る。日本の三洋電機が主な製造者である。なお、吸収波長域の異なる材料同士を積層するという点では下記の多接合型太陽電池に似るが、pn接合は1つ(単接合)である。; 多接合型:吸収波長域の異なるシリコン層を積層したもの。アモルファスシリコンと各種の結晶シリコンを積層したものの他、通常のa-Siに吸収波長域の異なるa-SiCやa-SiGeを積層したものなどが開発・実用化されている。高効率で温度特性などに優れるものが多い。太陽電池#多接合型太陽電池|多接合型太陽電池の項を参照。; 球状シリコン型:球状シリコン型太陽電池とは、無数の球状シリコン粒子(直径1mm程度)と、集光能力を上げる直径2~3mmの凹面鏡(電極を兼ねる)を組み合わせた太陽電池のことであるhttp://www.fujipream.co.jp/top/img/20051208_syukosiryo.pdf
例1http://www.kyosemi.co.jp/product/pro_ene_sun_j.html
例2。一般的な結晶シリコン型の1/5程度のシリコン使用量で、アモルファスシリコンよりも高い変換効率が期待できる方式である[http://www.kyocera.co.jp/ir/presentations/pdf/pppdf0511_8.pdf]。2007年初めの時点で10%を超える発電効率が報告されている。球状シリコンの生産方法は、プラズマで溶かしたシリコン液滴を1〜2秒程度自由落下で滴下させ、表面張力でシリコン液滴を球状とし、落下中にレーザー照射により結晶化させることにより生産される。個々のシリコン粒子は単結晶である。高純度シリコン原料の供給が追いつかない状況が続く中、シリコンの供給状況に影響されにくく、生産工程も簡易なことから、コストを下げやすい方式として普及が期待されている[http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060303/113976/]。2007年秋から日本企業にて量産開始、2008年より一般販売される予定である( EETIMES Japan no.26、E2パブリッシング株式会社P.19)。
化合物系
例1http://www.shell.co.jp/products/ssj/solacis/index.html
例2)。
例)。
有機系
上記のシリコンや無機化合物材料を用いた太陽電池に対し、光吸収層(光電変換層)に有機化合物を用いた太陽電池も開発されている。製法が簡便で生産コストが低くでき、着色性や柔軟性などを持たせられるなどの特長を有する。変換効率や寿命に課題があるが、実用化されれば将来の市場で大きなインパクトが期待されるため、開発が競われている。; 色素増感太陽電池:有機色素を用いて光起電力を得る太陽電池。代表的なものはグレッツエル型(または湿式太陽電池)と呼ばれる型式のもので、2枚の透明電極の間に微量の色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ単純な構造を有している。製造が簡単で材料も安価なことから大幅な低コスト化が見込まれ、最終的には現在主流の多結晶シリコン太陽電池の1〜数割程度のコストで製造できると言われている。また軽量、着色も可能、などの特長を持つ。現在の課題は効率と寿命であり、技術的改良が進められている。電解液の蒸発を如何に防ぐかが重要であり、固体化などの技術開発が進められている。2005年時点での世界記録は、シャープが持つ10.4%である(Chibaら、15th PVSEC,Shanghai,2005)。既に企業による大型モジュールの試作やフィールドテストが各国で行われるなど、将来の低コスト太陽電池として有望視されている。; 有機薄膜太陽電池:導電性ポリマーやフラーレンなどを組み合わせた有機薄膜半導体を用いる太陽電池。上記の色素増感太陽電池よりもさらに構造や製法が簡便になり、電解液を用いないために柔軟性や寿命向上の上でも有利なのが特長で、21世紀に入ってから盛んに開発が行われるようになった。課題は変換効率であり、現在の記録は単接合では4〜5%程度、多接合ではUCSBの Heegerらの6.5%である[http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070713/135976/]。より高効率の出る材料の探索が進められている(産業技術総合研究所太陽光発電研究センター「トコトンやさしい太陽電池の本」、日刊工業新聞社、ISBN 978-4-526-05795-3P.76)。
量子ドット型
使用する材料がまだ特定されていない太陽電池として、量子効果を用いた太陽電池が検討されている。第三世代型太陽電池とも呼ばれる。例えばp-i-n構造を有する太陽電池のi層中に大きさが数nm〜数10nm程度の量子ドット構造を規則的に並べた構造などが提案されている。この量子ドットの間隔を調整することで、基の半導体(シリコンやGaAsなど)の禁制帯中に複数のミニバンドを形成できる。これにより、単接合の太陽電池であっても、異なる波長の光をそれぞれ効率よく電力に変換することが可能になり、変換効率の理論限界は60%以上に拡大する(P.78)。現在の一般的な半導体プロセスよりもさらに微細な加工プロセスの開発が必要であり、米国などで開発が進められている(http://en.wikipedia.org/wiki/Solar_cell#Third
英語版)。
多接合型太陽電池
多接合型(スタック型、積層型、タンデム型などとも呼ばれる)太陽電池とは、利用波長の異なる太陽電池を複数積み重ねた太陽電池である。
特徴
原理
* 太陽光のスペクトルは紫外線から赤外線まで幅広く分布するが、短波長(紫外、紫、青)の光になるほど光子は大きなエネルギーを持ち、より大きな禁制帯幅を超えてキャリアを励起できる。この短波長側の光に対応した禁制帯幅を持つ単接合太陽電池を用いれば、より大きな電圧を得ることが出来、短波長域の光のエネルギーをより効率良く利用できる。しかし禁制帯幅を拡げすぎれば、より長波長の光は素通りして利用されず、出力電流が減少する。応用
例1 http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/eco/421288
例2)。アモルファスシリコンは禁制帯幅が広く、利用波長域が結晶シリコンと異なるため、同一元素同士でも多接合太陽電池を形成できる。このようにすることで効率だけでなく、温度・光強度に対する特性や最終的な資源の消費量の面でも優れた製品が市販されている(太陽電池#温度の影響|温度の影響も参照)。
温度の影響
太陽電池モジュールは条件によっては日光によって温度が60〜80℃にも達することがあるが、太陽電池では温度が上昇することで出力が低下する現象が見られることがある。これは高温において禁制帯幅(シリコンでは1.2eV)が減少することで出力電圧が低下するためである。エネルギーギャップの大きいアモルファスシリコンや一部化合物系の太陽電池では電圧低下の影響が少ないため、モジュールが高温になる地域では有利になる。一方、高温になると光吸収係数が大きくなることで電流が増加する効果も発生するが、結晶シリコンでは通常この効果は小さい。
アモルファスシリコンの光劣化
アモルファスシリコンは強い光の照射によってシリコンのダングリングボンドが増加し、導電率が劣化する性質を持つ。これはステブラー・ロンスキー(Staebler-Wronski)効果と呼ばれ、欠陥密度の増加によって素子内でのキャリアの移動を阻害し、太陽電池の性能の劣化を招く。これに対しては、下記のような対策が取られる。
関連項目
参考資料
外部リンク
解説サイト:
太陽光発電って何だろう(NEDOによる技術解説)
太陽光発電ってなあに?(太陽光発電協会による解説)
太陽光発電の基礎知識(シャープによる解説)
半導体/電子デバイス物理(甲南大学による半導体物性からの解説)国内関連団体:
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
太陽光発電技術組合
海外:
米国エネルギー省再生可能エネルギー研究所 (National Renewable Energy Laboratory,NREL)
Solarbuzz
Photovoltaic Specialists Conference (PVSC)
Progress in Photovoltaics: Research and Applications
その他太陽電池に関する情報:
三洋電機、太陽電池生産の新拠点を大阪府貝塚市に設立
富士電機システムズ・フィルムタイプアモルファス太陽電池
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